ページ

2013年9月24日火曜日

五感を鍛える


ピアノをより楽しむために音楽全般、音楽だけじゃなく芸術全般を学んだほうがいい、と言うには理由があります。


創作というものの根っこは一緒なので、たとえば陶芸という花やお料理という花を鑑賞すると、同じ根っこから出ているピアノの花が理解しやすくなるということです。

「サロンの会」という、素晴らしい会場で素晴らしいお料理をいただく贅沢なピアノ発表会をしていますが、「別にグルメじゃないし、私はピアノを弾きたいだけだから、お金かけて遠くまで行かなくても、近くのフツーのスタジオで充分、スタジオなら同じ金額で2回分」って思う方もたくさんいらっしゃるでしょう。なぜその必要があるのか。

一言で言うなら、「感動」を五感で感じる練習です。
先日も「美味しいものがわかるには美味しいものを食べる」と書きましたが、いいものがわかるにはいいものに触れないとだめです。そして、ピアノは一流、他の感性はナシ、ってことはあり得ないんです。繋がっているので。

素晴らしい演奏を作り上げるのに時間と努力が必要なように、会場、料理は目で見て舌で感じられる時間と努力の結晶です。そこにはその道のプロフェッショナルが関わっています。素晴らしい会場とはただの箱ではなく宝箱です。庭は造花じゃないし、インテリアは100均じゃないし、自分では到底買えないものが揃っていて、素晴らしいお料理はスリーズドライでもレトルトでもない。

何もフレンチのフルコースが一流で、家で食べるお米とお漬け物のご飯が三流なのではありません。ただ技を磨き上げるとはどういうことか、プロの仕事を見てみるということです。

最近安価なフランス料理店が流行っているようですが、安いのにも高いのにも全部理由があります。高いレストランが高いのは、テーブルクロスも椅子も食器もカトラリーも飾ってある絵画もお店の方のサービスも、一つ一つが芸術で、お店全部が総合芸術だからです。敷居が高くても敷居を超えないかぎりそれは自分のものにはなりません。

ピアノを弾く技術は「こう弾きたい」という理想に付いて来ます。「こう」と感じるのはただピアノをがむしゃらに弾く訓練ではなく、五感を磨くことで生まれて来ます。

料理のように具体的な「見た目がキレイ、こんな調理法があるんだ」という感動は、ピアノのような抽象的な「きれいな音、凝ったフレーズ」より、だんぜんわかりやすいのです。ドビュッシーの「アラベスク」は「くねくねしている模様」のアールヌーボー絵画やガラス器を見ると「これのこと?」とわかりやすくなります。


「なんてきれいな」「なんておいしい」そんな単純な経験を沢山積み上げて下さい。
必要な技術とはそこに近づこうと磨かれて行くものです。高尾山の頂上に憧れるのと富士山の頂上に憧れるのでは、普段のトレーニングも変わって来ませんか?



0 件のコメント: