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2014年1月8日水曜日

素人の、技術より表現ってどういう事ですか?

年末、ブログの内容にタイトルのご質問いただきました。

(こちらのブログhttps://www.blogger.com/blogger.g?blogID=130771376070540689#editor/target=post;postID=5446226873227794023;onPublishedMenu=posts;onClosedMenu=posts;postNum=15;src=postname)

お答えが遅くなりすみません。


表現と技術の話をすると、かなり厳しい事を言わなくてはいけないので、覚悟して下さい。厳しい話はごめんという方は読まないで下さいね。ピアノは厳しくなくても楽しめますから。そもそも他人に厳しいことを言うわりに自分に甘い私ですので。


ショパンの「子犬のワルツ」だったら、ということでしたので、そちらを例にしてみます。

「子犬のワルツ」はショパンの付けた題名ではありませんが、子犬が小さな尻尾をくるくる回してじゃれて走っているようなかわいい曲です。


1、テンポが速い 
右手の指がまわる事は勿論ですが、もっと必要なのが左手の速さ。5番から飛んで和音をばしっと取る左手の瞬発力が必要です。

2、拍子
3拍子です。が、1小節を1拍に取る4拍子でもあります。

3、バランス
右メロディが浮き立つ。左は右より小さい。しかし左の1、2、3拍のバランス、性質を変えることで曲が成立つ。

4、アーティキュレーション(曲想、表現)
3部形式。速いと言いつつ、その箇所その箇所で緩急がついていて遅い部分もある。3拍子でありながら4小節単位のフレーズを感じる。また、強い弱いも急にではなくいかにも自然に。メトロノームとぴったり合うような弾き方は最悪。やりすぎるのは変、注意。


これでもプロの演奏には全然足りません。これらが最低出来るかどうかがこの曲を弾けるかどうか、です。アマチュアにはなかなか難しいですね。なので、「速く弾けないからゆっくり弾く」「アーティキュレーションはつけない」「弾けるとこは速く、むずかしいところはゆっくり」など、ついついやりがちです。

でも、この曲なら「駆け回っている感じ」だけは捨ててはいけないので、テンポが遅いとか左手がまごまごしちゃうとかだと「技術を表現でカバー」出来ない問題になります。
自分で出来ない部分が、音楽として果たして妥協していい部分かどうか、その曲の致命傷にならないか、判断してください。


まずは、<致命傷=小走り程度にも聴こえない、という方>

残念ですが、原曲でこの曲を弾く事はあきらめて下さい。子犬でなくても走ってもらいたい曲です。好きだからという理由で弾けるなら苦労しません。私もラフマニノフのピアノコンチェルト第2番が大好きで全楽章原曲で弾きたいです。でも希望と現実は違います。どんなに溢れんばかりのその曲への愛を持っていても技術がなければ弾けません。残念です。そんなもんです。

そしたら

1、原曲でなく、子犬のワルツのアレンジを、この曲らしく駆け回ってる感じで弾く

2、子犬のワルツは鑑賞用と決め、自分の指が動く別の曲を探し、その曲らしさを大事に弾く


のどちらかになりますね。

上記1については、作曲家に敬意を払って原曲を弾くことはとても大事ですし、それを弾きたいのも山々ですが、それはプロだから出来る事です。プロはこれらが出来るために、たどり着くまでに、ものすごい努力をしています。だからこそ、これらのことが出来るのです。最低基礎練習1万時間です。ほんとのことです。浅田真央ちゃんの4分のプログラムを素人が転びながら30分かけて滑ろうとは思わないですよね。それより、ジャンプをなくして1分間、流れるように滑った方がいいのは誰でもわかります。ピアノも一緒です。

アレンジものは本物と全然違うのが不満です。でもそこをいわゆる「技術ではなく表現力」でカバーするのです。音符が少なくなると、駆け回ってる感じがしない、と考えるのは浅はかです。指の事を気にしないでいい分、弾き方で拍子感やフレーズ感が出しやすくなるし、左右のバランスを聴く余裕も出てくるはずです。また全体の速くなったり遅くなったりが耳を使えればやりやすくなるはずです。先生に弾いて頂くといいと思います。そして少ない音数でどれだけこの曲らしさが出せるかやってみて下さい。イメージの作り方については下にもう少し詳しく書きます。私もラフマニノフのコンチェルトはピアノ連弾にアレンジしてあるものをイメージたっぷりに膨らませて友人と弾きました。楽しかったです。


2、については、有名な曲じゃないと譜読みが大変だったり、弾く気がしないという方がとても多いです。大人の方はほとんどと言っていいかもしれません。でも今はユーチューブなどもあるし、先生にお手本を弾いてもらえばいいし、食わず嫌いをせず「小さな原曲」にチャレンジして欲しいものです。有名曲にはいわゆる当時の販売戦略などで「名の知れたいい曲」になったものもあります。

たとえばソプラノ歌手はどんなに好きな曲でもアルト歌手の歌は原曲で歌えません。ピアノも好きなものでなく、まずは自分に合ったもの、出来るものの中から選ぶ事が、なにより自由に表現出来る条件です。技術より表現、を実践するには、必死に何の音を弾く、という事から離れることから始まります。また自分を知り、受け入れる事でもあります。




次に、<指はある程度は動くけど、プロのようには弾けない、という方>

いちおう弾けているけど、音がムラになったり、滑ってしまったりする方です。つまり一応「小走りくらいでは弾けている」場合です。ここは先生に判断して頂いた方がいいですね。自分で自分の音が聴けていない場合がありますから。

そんな方は、ズバリ出来ない技術には『目をつぶる』。(なにしろそれを直すには1万時間必要ですから)。そしていわゆる「技術ではなく表現」で聴かせるために、なんちゃってでもいいのでこの曲の物語を制作するのです。上で述べたイメージの作り方です。

ショパンが何歳くらいの時、誰のために作ったとか、どんな気持ちで作ったとか調べられる事は調べる。先に書いたように、『子犬』はショパンの付けた題名ではないので、本当は子犬ではなくていいのです。あとはもう自分なりに曲を分析します。子犬が何匹とか、ほんとうは子犬は出てこなくて、ショパンの若い日の回想が走馬灯のようにめぐってるとか、もしかして舞踏会を初めて見てテンション上がったあの日のショパンとか、この際自分の物語にして、デートの日に寝坊して慌てて準備して、行こうと思ったらあ〜あれを忘れた、でもちゃんと間に合ってよかった、曲とか。

そうすると、「ここであわてて起きた!」とか、「探し物が見つかってほっとした」とか、「恋人の顔を浮かべて弾んでる」とか、緩急をつけて、強弱もつけて、間を取って、場面が変わって、弾いていて情景が浮かぶようになります。ミスタッチでも楽しいですね。

3部形式を意識して、仮の物語皆様も考えてみて下さい。

アマチュアは正しさは求めなくていいのです。これがアマチュアの最大の特権です。アマチュアピアニストの方って、それはそれは素晴らしいと思います。でも、プロのように弾けなければ楽しくない、と思った時点で終わりです。失敗しても「へへっ、やっぱり難しいな〜」くらいの気持ちを持つ事です。繰り返しますが、技術で成功するには1万時間ですから。


答えになっていたでしょうか?
また気づいた事は補足していきます。この辺をもっと、というのがあればまたお尋ねください。






















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